シェイプ・オブ・ウォーター(The Shape of Water)

賞への意識が垣間見れる『シェイプ・オブ・ウォーター』。映像美と音楽には一見の価値あり!

カテゴリー恋愛ドラマ
監督ギレルモ・デル・トロ
脚本ギレルモ・デル・トロ
ヴァネッサ・テイラー
製作会社Bull Productions
製作国アメリカ
言語英語
公開2017年8月31日 (VIFF)
2017年12月8日(アメリカ)
2018年3月1日(日本)
上映時間123分
製作費1950万ドル
興行収入1億9400万ドル(世界)

予告動画

要約

アメリカとソ連が冷戦下にあった1962年。幼い頃、首と声帯を傷つけられたことで発話障害を持つ主人公イライザ・エジスポート(サリー・ホーキンス)は、機密機関である「航空宇宙研究センター」の清掃員として働いていた。映画館の上にあるアパートで一人暮らしをするイライザには、ゲイの隣人ジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)と仲良くしているものの恋人はおらず、身も心も寂しさを持て余していた。

ある日、宇宙センターの新メンバーであるロバート・ホフステトラー博士(マイケル・スタールバーグ)が、一体の生物が入ったタンクを運び込む。アマゾンから極秘で運ばれてきたという生物に、清掃していたイライザも目を奪われる。閉ざされた扉の向こうにいる生物を普段目にすることはなかった。しかし、元軍人で警備に当たっているリチャード・ストリックランド(マイケル・シャノン)が生物に指を引きちぎられ、イライザと同僚のゼルダ・フラー(オクタヴィア・スペンサー)は清掃をするために生物のいる部屋に入った。

ストリックランドの指と結婚指輪を拾ったイライザは、生物を目にする。まるで半魚人のような見た目をした生物にイライザは強く惹きつけられ、その日以降こっそり部屋に忍び込んで交流を楽しむようになる。イライザは生物にゆで卵を与え、手話を教えた。

ホフステトラー博士は生物を人間に代わる宇宙飛行士として宇宙に飛ばしたいと考えていたが、ストリックランドは生体解剖をして生物の秘密を明らかにしたいと考えていた。意見が食い違う二人だが、上官がストリックランドに同意したことで、生物の生体解剖が決まる。

実はソ連の二重スパイであったホフステトラー博士は、生体解剖することでアメリカが優位に立つことを恐れ、イライザと手を組み生物をセンターから逃がす作戦を立てる。イライザはジャイルズにも協力を頼みこむが、一旦拒否される。しかし、再就職もままならず、思いを寄せていたカフェの男性店員にも冷たくあしらわれたジャイルズは、本当に大切なことに気づき、協力の決意を固める。

生物を洗濯物用のカートに乗せ、ストリックランドに追われながらもなんとか脱出は成功する。イライザは自宅のバスタブに塩水を張って生物を休ませる。イライザは生物を海に逃す日を決めるが、一緒に暮らすことでより二人(?)の仲は深まり、身体の関係を持つようになった。生物には回復能力があったため、ジャイルズは薄毛を解消し、ケガを短期間で治すことができた。

一方、生物を逃してしまったことでストリックランドは、上官から責められる。焦ったストリックランドはイライザやゼルダに差別的な発言を投げかけていびるものの、同時にイライザに惹かれていく。イライザはストリックランドが手話をわからないのをいいことに「くたばれ」と罵った。

ストリックランドは、ついにホフステトラー博士がソ連のスパイであることを知った。命を狙われたホフステトラー博士は銃撃を受けた上に、ストリックランドから拷問を受けて絶命する。

その後、ゼルダの夫の口から生物を逃がした犯人がイライザだと聞かされたストリックランドは、イライザと生物がいる桟橋に急ぐのだった…。

 

レビュー

第90回アカデミー賞の作品賞・監督賞・作曲賞・美術賞の4部門を制覇した本作品。ハリウッド映画であるはずだが、水中を映した芸術的なオープニングや楽曲の入り方などはまるでヨーロッパ映画のよう。そしてまず驚いたのは、冒頭から始まったイライザの自慰シーンだ。かなり直接的な描写であり、近年のハリウッド映画にしては珍しいのではないだろうか。R-18+指定されている理由も納得だ。

予備知識なしで見る人は驚くかもしれないが、これはイライザが抱える孤独の象徴と言えるシーンだろう。発話障害を抱えるイライザは、決して美人でもなければ若くもない。はっきり言って「冴えない掃除のおばさん」だ。おそらくこれまでの人生で、ほとんど男性経験がなかったのだろう。自慰行為が(おそらく)日常的になっていることからもそれは推測される。

しかし、いくら男性と縁がなかったからといって、人間ではなく生物に惹かれるという点はかなり理解に苦しむ。まだ見た目が愛らしかったり、美しかったりするのであればわからなくないが、緑色で半魚人のような姿をした生物ははっきり言ってグロテスクでしかない。さらには動物的本能が強く、ジャイルズの飼い猫も食べてしまうような生き物なのだ。そんな生物をなぜ恋愛対象として見られるのか、イライザは予想を上回るド変態といえよう。ついでに、飼い猫が食べられたにも関わらず「(生物の)本能だから」とあっさり生物を許すジャイルズも相当な変わり者だ。

その他にも、宇宙センターのセキュリティがザル過ぎるなどツッコミどころはいくつかあるが、奇抜な設定と音楽、美術に惹きつけられて2時間飽きることはなかった。水をいっぱいに溜めた部屋、雨、バスの窓についた水滴など、タイトル通りにさまざまな「水の形」が出てくるところもおもしろい。「シェイプ・オブ・ウォーター(水の形)」というタイトルには、水に決まった形がないように、人間も型にはめられるものではない、差別はナンセンスだという意味が込められているのだそう。

メッセージは伝わるし、上手く水につなげているところは素晴らしいと思うのだが、どうしてもあざとさを感じてしまうのは私だけだろうか。近年ハリウッド映画に多い「差別撤廃」のメッセージはどうも食傷気味なのである。

2年前の第88回アカデミー賞の際、ノミネートされた俳優がすべて白人だったことに批判が集中したのは記憶に新しい。批判者へのご機嫌取りなのか、昨年の『ムーンライト』といい、「シェイプ・オブ・ウォーター』といい、差別を題材にした作品が連続で受賞している。差別を描いた作品で、必ずといっていいほど差別されるのはLGBT、黒人、そして障がい者だ。今作でもそれらの特徴を持つ人すべてが登場するため、なんとなくご都合主義に感じられた。差別の対象が固定化されていることが、かえって差別を増長させてはいないだろうか。

良い意味でハリウッド映画らしくないところが多く、アカデミー賞受賞も納得の映画だが、この点だけはどうしても気になった。ギレルモ・デル・トロ氏はこれまでも『パシフィック・リム』などで挑戦的な作品を撮り続けている名監督だ。賞に目がくらんでしまったのだとしたら大変惜しい。

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