ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男(Darkest Hour)

「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」はチャーチルの特殊メイクだけでも一見の価値あり!

カテゴリードラマ
監督ジョー・ライト
脚本アンソニー・マクカーテン
製作ティム・ビーヴァン
リサ・ブルース(英語版)
エリック・フェルナー
アンソニー・マクカーテン
ダグラス・アーバンスキー(英語版)
製作会社パーフェクト・ワールド・ピクチャーズ(英語版)
ワーキング・タイトル・フィルムズ
言語英語
公開2017年9月(TIFF)
2017年11月22日(アメリカ)
2018年1月12日(イギリス)
2018年3月30日(日本)
上映時間125分
製作国イギリス
制作費3000万ドル
興行収入1億5000万ドル(世界)

予告動画

要約

1940年5月、第二次世界大戦初期のイギリスが舞台。ヒトラー率いるドイツ・ナチスは東ヨーロッパの大半を占領し、フランスは陥落寸前、それはフランスの同盟国であるイギリスも例外ではなかった。戦争の責任を問われたネヴィル・チェンバレン首相(ロナルド・ピックアップ)は退陣に追い込まれ、次の首相探しが始まる。

ハリファックス子爵(スティーヴン・ディレイン)を推す声が圧倒的に多かったが、チェンバレンはウィンストン・チャーチル(ゲイリー・オールドマン)を指名する。これまで軍人、そして政治家として生きてきたチャーチルだが、さまざまな失策と変わった性格で党内では嫌われ者として知られていた。組閣を任命した国王のジョージ6世(ベン・メンデルソーン)でさえも、チャーチルを首相にすることを快く思っていなかった。

チャーチルは国会内での初演説で「最も大切な言葉はVictory(勝利)である」と話し、戦争を続ける意思を表明する。ドイツとの和平やヒトラーとの交渉を望むチェンバレンやハリファックスはチャーチルに同意できず、賛成表明とされる白いハンカチを振らなかった。

ほとんど孤立無援の状態ながらも、チャーチルは最愛の妻であるクレメンティーン(クリスティン・スコット・トーマス)や秘書兼タイピストのエリザベス・レイトン(リリー・ジェームズ)に支えられながら政策を掲げる。ラジオ演説では国民に勝利と団結を呼びかけ、新聞記者に手の甲を見せたVサインで勝利を誓う。エリザベスからVサインのやり方が間違っていると指摘されたチャーチルは苦笑する。

チャーチルの政策に同意できないハリファックスはジョージ6世にチャーチルの辞任を提案する。そしてチャーチルにドイツとの和平交渉に応じないのであれば自分は辞任すると告げる。カレーが陥落し、弱気になっていたチャーチルは和平交渉に方向転換することを考え始める。

その間にもドイツはさらに侵攻し、オランダとベルギーを陥落、フランスへの攻撃も激化していた。イギリス軍もドイツ軍に攻められ、フランスのダンケルクにある海岸まで追い込まれてしまう。孤立した30万人もの兵を救うために、軍艦から小さなボートまでさまざまな船を集めてダンケルクまで送るダイナモ作戦が実行された。

チャーチルは演説内容を口にし、エリザベスはタイプライターで文字起こしするが、途中で泣き出してしまう。彼女はダンケルクの戦いで兄を失っていたのだ。エリザベスの涙を見たチャーチルは優しく彼女を慰める。

自分の取るべき道が分からなくなったチャーチルは、庶民の生活をしたことがない自分を見つめ直し、護衛もつけずにたったひとりで地下鉄に乗る。首相が乗り込んできた地下鉄の乗客たちは驚き、謙遜した態度を見せる。

チャーチルは乗客一人ずつに話しかけ、緊張をほぐすとイギリスが今後取るべき政策を尋ねる。「ドイツに降伏する」と言うと全員が反対し、「和平に応じることなく戦い続ける」というと全員が賛成した。

一般市民の声を聞いたチャーチルは国会に戻り、ドイツ軍がイギリス本土に攻めてきても徹底的に戦うべきと熱弁する。チャーチルの熱い思いに心動かされた国会議員たちは、チャーチルに同意し、白いハンカチを振り回すのであった。

 

レビュー

日本では映画の内容よりもアカデミー賞でメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した辻一弘氏に対する評価で有名になってしまった本作品。日本人が受賞するのはものすごい快挙であるし、ゲイリー・オールドマン扮するチャーチルのメイクアップは肖像画で見るチャーチルそのものといえるほどクオリティが高いのだから仕方がない。映画そのものよりもメイクアップに感動した人もいると聞く。同時期に制作された「チャーチル ノルマンディーの決断」ではブライアン・コックスが特殊メイクなしでチャーチル役に挑んでいるのだが、ゲイリー・オールドマンのチャーチルと比べるとどうしてもニセモノのように思えてしまう。それだけこのチャーチルのメイクアップはすごいのだ。

メイクアップばかりが話題になっているが、ストーリーも決して悪くはない。チャーチル就任からダンケルクの戦いの決定までのわずか27日間にスポットを当てているので、全体的によくまとまっている。しかし、戦争のシーンはほとんどなく、ハイライトと言えば最後のチャーチルの演説と地下鉄に乗る場面くらいのものなので味気がないといえばない。特に第二次世界大戦についての知識がない人にとっては、退屈な会議が淡々と続くつまらない映画と思えるだろう。

なぜこんな地味な映画に仕上げたのか、それはチャーチルの特性を考えるとよくわかってくる。チャーチルは過去に何度も失策を重ね、決して有能な政治家とはいえない。葉巻と酒が大好きで、機嫌が悪いとだれかれ構わず当たり散らす変わり者で、人格者ともかけ離れている。おまけに太った老人で、決して容姿がいいともいえない。

しかし、彼には誰にも負けない特技がある。それは言葉の使い方だ。作中で「言葉の魔術師」と表されているように、チャーチルの言葉には人を動かす何かがある。フランスとの交渉でも、最後の演説でも、言ってみればチャーチルの言葉だけで人が動かされているのだ。のちにノーベル文学賞を受賞するほど、チャーチルは言葉の使い方に長けた人物で、劇中にもいくつか印象に残る言葉が登場する。

「欠点があるから強くなれる」、「大切なのは続ける勇気を持つこと」などの名言は印象的だ。エリザベスがチャーチルの演説に涙するシーンからも、チャーチルの言葉がいかに強いかが伝わってくる。

今作はチャーチルの言葉の魔術師ぶりを楽しむ作品であるため、派手なアクションシーンを期待している人にとっては退屈に感じるかもしれない。戦争の知識がなければ尚更だろう。その点でいえば、ある意味でヨーロッパ映画らしく不親切な映画といえる。

しかし、史実を忠実に描いているため、少しでも知識があれば楽しく見られるはずだ。これから見る人で知識に自信がない人は、パンフレットなどから予習してから見ることをおすすめしたい。ゲイリー・オールドマンの安定した演技とハイクオリティなメイクアップ、そして言葉の魔術師と呼ばれたチャーチルのとりこになるだろう。

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