アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル(I, Tonya)

天才も毒親からは逃げられない?「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」が痛々しすぎる

カテゴリー伝記
監督クレイグ・ガレスピー
脚本スティーヴン・ロジャース
製作ブライアン・アンケレス
スティーヴン・ロジャース
マーゴット・ロビー
トム・アカーリー
製作会社ラッキーチャップ・エンターテインメント
クラブハウス・ピクチャーズ
AIフィルムズ
言語英語
公開2017年12月8日(アメリカ限定公開)
2018年1月19日(アメリカ拡大公開)
2018年5月4日(日本)
上映時間121分
製作国アメリカ
製作費1100万ドル
興行収入5300万ドル(世界)

予告動画

要約

ストーリーは主人公であるトーニャ・ハーディング(マーゴット・ロビー)の近親者インタビューから始まる。トーニャの母親のラヴォナ・ゴールデン(アリソン・ジャネイ)、元夫のジェフ・ギルーリー(セバスチャン・スタン)、コーチのダイアン・ローリンソン(ジュリアンヌ・ニコルソン)らは、トーニャの複雑な生い立ちや激しい気性、波乱万丈な人生を語る。

トーニャ(メイジー・スミス)はオレゴン州でラヴォナの5人目の子どもとして生まれる。貧しい家庭だったがトーニャは幼いころからアイススケートに強い関心を示し、スケートリンクに通いたがっていた。うんざりしていたラヴォナは4歳になったトーニャをスケート場に連れて行った。

裕福な子どもが集まる中、粗野なラヴォナは浮きまくっていたが、トーニャはすぐにスケート場になじみ、半年後には大会で優勝するようになる。コーチのダイアンについたトーニャは、その後もめきめきと実力をつけていく。ラヴォナはウエイトレスの仕事をしてトーニャのスケートレッスン費用を捻出していた。母親から日常的に激しい暴言や暴力を受けていたトーニャは父親を心の拠り所としていたが、ラヴォナと不仲になった父はトーニャ(マッケナ・グレイス)を置いて家を出ていってしまう。

15歳になったトーニャは母親譲りのきつい性格になっていたが、スケートの練習はまじめに1日8時間も取り組んでいた。高校に通う必要はないと判断されたトーニャはラヴォナから無理やり退学させられ、その分練習に時間を費やすようになった。

あるとき、トーニャはたまたま練習を見に来ていた高校生のジェフと知り合い、恋に落ちる。優しいジェフに惹かれたトーニャだったが、交際開始からしばらくしてジェフはトーニャに暴力をふるうようになる。しかし、子どもの頃からラヴォナの暴力に慣れていたトーニャはジェフの暴力も「愛しているから殴られる」と解釈する。

1986年、スケートアメリカの出場直前にトーニャはガムを噛み、タバコをスケート靴で踏み消した。この大会でトーニャはノーミスの演技を披露するものの、審査員からは評価されず優勝することができなかった。ラヴォナから暴言と暴力を受けたトーニャは家を出てジェフと暮らし始める。結婚したトーニャはささやかな結婚パーティーにラヴォナも招待するが、やはり二人の仲は相いれない。

1991年の全米選手権で、新しいコーチに師事したトーニャは遂に優勝する。脚光を浴びたトーニャは自信をつけ、ジェフの暴力にも抵抗するようになる。後の大会ではライバルだったナンシー・ケリガン(ケイトリン・カーヴァー)をおさえて優勝した。
一度はジェフと別れ家を出たトーニャだが、ジェフとジェフの友達のショーン・エッカート(ポール・ウォーター・ハウザー)から付け回され、暴言を吐かれると、自分が愛されていることを実感し、よりをもどす。

しかし、ジェフと復縁したことでスケートの調子が上手くいかなくなってしまう。初めての五輪は芸術点の不足と体重増加が原因で4位に終わってしまう。
メダルを獲得できなかったトーニャにスポンサーはつかず、ウエイトレスで日銭を稼ぐようになる。勤務先に訪ねてきたダイアンと仲直りし、次の五輪を目指すことになったトーニャだったが、そんな折に殺害予告が届くのだった…。

レビュー

本作は20年以上前にアメリカのフィギュアスケート界で実際に起こった事件をベースにしているのだが、毒親にDV夫と、現在日本で注目されている問題が詰まりに詰まっている。そういう意味では現代に制作されるべくして制作された映画と言えるだろう。

ポスターはポップな感じでかわいいし、フィギュアスケートというきらびやかで女性が憧れる世界を舞台にしているので、女子受けのいい映画だとは感じる。しかし、それ以上にトーニャの身に起こる問題が悲惨すぎて、ついつい感情移入してしまうのだ。

トーニャの人格形成に大きな影響を与えている母親・ラヴォナの虐待がとにかくすごすぎる。練習中にトイレに行かせてもらえず失禁してしまう幼少期のシーンからして強烈だが、その後の包丁で傷つけるシーンや、暴言を吐きまくるシーンなどとにかく悲惨なシーンの連続だ。それでも、ラヴォナを演じるアリソン・ジャネイの演技がうますぎるから目が離せない。

そんなラヴォナは冒頭のインタビューシーンからふてぶてしさいっぱいで、圧倒的な存在感を残す。これが中途半端に優しい母親だったら、トーニャの悲劇性も一気に軽くなってしまうだろう。ちなみにアリソン・ジャネイはこの作品でアカデミー賞やゴールデングローブ賞の助演女優賞を獲得している。

最近日本でも問題になっている「毒親」だが、やはり両親がきちんとしていないと子どももゆがんだ性格・性癖になってしまうのだと本作を見て実感した。暴言・暴力に慣れているからこそトーニャはジェフのようなDV男に引っかかってしまうのだし、きちんとした教育を受けさせてもらっていないから致命的に頭も悪い。トーニャ自身が言っているようにスケートしかない、空っぽな人なのだ。

もしトーニャが両親からきちんと愛情を受けて育っていれば、不幸の連続に巻き込まれることはなかっただろう。反対に、虐待を受けて育ったからこそスケート選手としての才能が開花したと見る向きもあるが、ひとりの女性の人生としてはあまりにも悲しすぎる。

ラヴォナ役の存在が大きすぎるが、トーニャを演じたマーゴット・ロビーの演技も素晴らしかった。特にトリプルアクセルをはじめとするスケートシーンは一体どのように撮影したのだろうか。さすがにマーゴット・ロビー自身がすべて演じたとは思えないが、氷上のシーンでのマーゴット・ロビーは本人にそっくりで、まるで全盛期のトーニャが蘇ったかのようだ。当時のインタビュー映像が時々混ざるのだが、本人を見てもちっとも違和感がない。これは結構すごいことだ。

フィギュアスケートファンであれば知らない人はいないといわれるほど有名なナンシー・ケリガン襲撃事件。犯人は本当にトーニャからの指示を受けて実行したのだろうか。真相は闇の中だが、この映画を見れば当時世界中から嫌われていたトーニャの見方が少しは変わるはずだ

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